70~80年映画ベストテン ― 2025年04月18日 15:28

1.風と共に去りぬ
南北戦争を背景とした愛憎劇。人は自分にとって本当に大切なものに気付かず、それを失って初めて、それに気付き、後悔するのだということを、主人公のスカーレットオハラを通じて、いやというほど教えてくれる作品。映画を観た後しばらく、主人公役を演じたヴィヴィアンリーのことが脳裏を離れないほど感銘を受けた。当時の自分自身の心理を分析すれば、この映画がテーマとする「人間の哀れさ」が主人公に凝縮されており、彼女に対して強烈なシンパシーが生じ、それが恋心に変換したのかと思う。昭和14年製作の映画が総天然色であることにも驚く。
2.ローマの休日
欧州の小国の王女が、ふとした偶然から、アメリカ人記者の泊まっているホテルの部屋に転がり込む。翌朝、記者は新聞で王女であることに気付き驚くが、特ダネにしようと取材を始める。しかし一緒に過ごすうちに、お互いの立場、国籍、身分を超え、一人の人間として心が通い合い、愛情が芽ばえはじめる。べスパに二人乗りで街を走り回るシーン。ぶらりと街の美容院に入りショートカットに変身したヘップバーンの品のよい愛らしさが印象的である。記者役のグレゴリーペックは、知性と教養、優しさやユーモアが溢れ、こんな大人になりたいと憧れたものだ。そんな彼は、王女が酒場で、乱闘に巻き込まれ、誰かの頭をギターで殴るなど、大暴れしているスクープ写真を撮ることに成功するも、これを全て封印する。この映画のテーマは友情と信頼だろう。
3.大脱走
実話である捕虜収容所からの脱走を題材にした戦争映画。スティーブマックイーンのバイクでの逃走シーンは、スタントを使わず自分自身が乗っていることは有名であるが、スタントのバイク乗りが足らず、追いかけるドイツ軍の隊員役としてもバイクに乗っていたことを、随分後になって知り、彼の映画に懸ける情熱に脱帽した。逆境を克服しようとする向上心と、失敗してもへこたれない七転八起の精神がこの作品のテーマ。
4.バックツーザフューチャー
.田舎町に住む少し無鉄砲だが正義感の強い高校生(マーティ)が、友人の科学者(ドク)が発明したタイムマシン、デロリアンで30年前にタイムスリップする。そこで、高校生時代の母親に出会い、好かれてしまい、それにより自分の存在が薄れていくのにあせりながら、何とか母親から逃げ、将来の父親と結び付けようと苦労しつつ、学園の悪ガキどもらと闘う姿をコミカルに描く、痛快青春SFファンタジー。乱闘というよりも逃走といったほうがよいかもしれないが、そのクライマックスでの主人公マーティ扮するマイケルJフォックスのエレキギターの演奏シーンも楽しい。
5.トラ・トラ・トラ
太平洋戦争開戦で、日本がアメリカに先制パンチをくらわした真珠湾攻撃を舞台にしたもの。戦闘シーンの迫力は半端ではなく見事である。製作時、まだ戦後25年くらいで、何とか戦争当時の本物の飛行機が飛べる状態で残っており、これをを使って撮影していたとのことで、このシーンは、他の映画でも使い回しされているらしい、映画の中では、日本がアメリカに対して宣戦布告せず、攻撃をしかけた点を問題視し、国際法に抵触する行為であるよう印象付けているが、日本側からすれば、当時経済制裁や、その他無理難題を突きつけられた事情もある。また、真珠湾には、戦艦ばかりで空母がいなかったことから、日本側からすれば、アメリカはこの攻撃を事前に知っていたのではないかという憶測もある。そこは勝てば官軍ということか。とはいえ、嘗ての敵同士が、これを題材として合作映画を撮るということも、おそらく世界で例がないことではないかとも思う。ちなみにタイトルの「トラ・トラ・トラ」は、阪神タイガースでも、動物の虎でもなく、日本軍の暗号で、「吾レ奇襲ニ成功セリ」の意味。(念のため)
6.チキチキバンバン
この映画を観るまで、劇場で観る映画といえば戦争映画がほとんどだった。なぜなら父が戦争映画が好きだったから。それで、この映画も目当ての戦争映画が満席で入れず、空いていたのがこの映画だったので、仕方なく入館したような記憶がある。しかし、はじめて年齢に相応しい映画だったのか、私にとって大変想い出に残るものになった。奥さんを亡くした中年の男には、女の子と男の子の二人の子供がいる。中年の男は発明家で、自分で改造した車チキチキバンバン号に乗って、一家で旅に出る。途中美しい女性との出会いもあり、発明のノウハウを盗もうとする悪者から逃れようとカーチェースもある。圧巻はチキチキバンバン号が空を飛ぶシーンで、観客は拍手喝采を送る。映画の中で流れる主題歌も楽しくて良い。
7.猿の惑星
公開後数十年経ってから、この映画で惑星を支配しているサルは日本人がモデルとの指摘があることを聞き、当時、日本人を「エコノミックアニマル」と揶揄する言葉もよく耳にしたことを思い出した。21世紀に入っても、各個人間同士、国家間同士共に、様々な差別や偏見は一向になくならないし、それが国家間同士であれば、戦争を引き起こすことになる。差別や偏見はなぜなくならないのか。それは他人に対する優越感、支配欲、価値観の押し付け、攻撃性などを、本質的に、人間誰しも持っているものであるからではないだろうか。少々悲観的になってしまったので、本題に戻る。宇宙飛行士チャールトンヘストンは、朽ち果てた自由の女神を発見し、この惑星が地球であり、核戦争で人類が滅亡してしまったことを悟り、愕然とする。全世界で、エゴイズム剥きき出しの争いは絶えず、また核兵器拡散が進む中、このサイエンスフィクションが現実とならないことを祈るしかない。
8.愛と青春の旅立ち
厳しい訓練に耐え、同期の友人の自殺なども乗り越えながら、自らの手で夢を実現するサクセスストーリー。主人公は教官から、空軍パイロットになれるよう鍛えられているというより、むしろパイロットになることをあきらめさせようとしているとしか思えない激しいしごきや人格否定を受ける。苛め抜かれる主人公が、自分の居場所はここしかないんだと涙ながらに教官に訴えるシーンには、胸が詰まる思いがする。邦題の甘い表現とは異なり、映画の内容はことのほか厳しさに溢れているが、ラストシーンの卒業式で、ルイスゴセットジュニア扮する教官の、主人公に対する態度により、彼の心が分かり、後味は悪くない作品である。
9.スタンドバイミー
4人の少年たちが、事故死したという死体を捜しに旅に出る他愛無い話であるが、それぞれの家庭環境や個性がうまく描かれている上に、大人になった主人公がこの小さな冒険を回想するという形式を採用しているため、大人が観ても少年たちに自分自身の思春期を自然に投影でき、一人前の大人への階段を登ろうとする時に生じる苦悩やある種のほろ苦い感情などが共感できてしてしまう。単線の鉄橋を渡る途中で列車が来てしまい、列車と競争するかのように、みんなで逃げるシーンが印象的である。この映画でやんちゃな少年を好演しているリバーフェニックスが、1993年に23才の若さで急逝している。死因は薬物中毒によるものらしい。将来を嘱望されていた俳優だっただけに残念なことである。。ちなみに、題名と同名の、主題歌「スタンドバイミー」は、学生時代にジョンレノンのカバーバージョンの方はよく聴いていたが、この映画には、1961年発売のベンEキングのオリジナル版があう。
10.激突
しがないセールスマンの主人公が前をトロトロ走っている大型トレーラーを何気なく追い抜いたことが事件の発端となる。主演のデニスウィーバーは、国営放送局(NHK)で、コロンボ警部のあとにやっていた警部マクロードの主人公を演じていた俳優。このTVドラマは、田舎もので破天荒な警察官が活躍する痛快活劇。主人公はまさにアメリカ版両津勘吉だが、両津と違うのは、階級が警部であるのと、実際に難事件を解決してしまうところ。吹き替えは宍戸錠が担当しており、随所にコミカルな味をだしていたが、「激突」では吹き替えを穂積隆信がやっており、神経質で陰気な雰囲気を醸しだしていた。ご存知スピルバーグ監督出世作。アメリカではTV用に製作されたらしいが、この後、数々の大ヒットを連発させる同監督の才能を予感させる一作である。
※70~80年代は製作年ではなく、その映画を観た時期を基準としたベストテンです。
南北戦争を背景とした愛憎劇。人は自分にとって本当に大切なものに気付かず、それを失って初めて、それに気付き、後悔するのだということを、主人公のスカーレットオハラを通じて、いやというほど教えてくれる作品。映画を観た後しばらく、主人公役を演じたヴィヴィアンリーのことが脳裏を離れないほど感銘を受けた。当時の自分自身の心理を分析すれば、この映画がテーマとする「人間の哀れさ」が主人公に凝縮されており、彼女に対して強烈なシンパシーが生じ、それが恋心に変換したのかと思う。昭和14年製作の映画が総天然色であることにも驚く。
2.ローマの休日
欧州の小国の王女が、ふとした偶然から、アメリカ人記者の泊まっているホテルの部屋に転がり込む。翌朝、記者は新聞で王女であることに気付き驚くが、特ダネにしようと取材を始める。しかし一緒に過ごすうちに、お互いの立場、国籍、身分を超え、一人の人間として心が通い合い、愛情が芽ばえはじめる。べスパに二人乗りで街を走り回るシーン。ぶらりと街の美容院に入りショートカットに変身したヘップバーンの品のよい愛らしさが印象的である。記者役のグレゴリーペックは、知性と教養、優しさやユーモアが溢れ、こんな大人になりたいと憧れたものだ。そんな彼は、王女が酒場で、乱闘に巻き込まれ、誰かの頭をギターで殴るなど、大暴れしているスクープ写真を撮ることに成功するも、これを全て封印する。この映画のテーマは友情と信頼だろう。
3.大脱走
実話である捕虜収容所からの脱走を題材にした戦争映画。スティーブマックイーンのバイクでの逃走シーンは、スタントを使わず自分自身が乗っていることは有名であるが、スタントのバイク乗りが足らず、追いかけるドイツ軍の隊員役としてもバイクに乗っていたことを、随分後になって知り、彼の映画に懸ける情熱に脱帽した。逆境を克服しようとする向上心と、失敗してもへこたれない七転八起の精神がこの作品のテーマ。
4.バックツーザフューチャー
.田舎町に住む少し無鉄砲だが正義感の強い高校生(マーティ)が、友人の科学者(ドク)が発明したタイムマシン、デロリアンで30年前にタイムスリップする。そこで、高校生時代の母親に出会い、好かれてしまい、それにより自分の存在が薄れていくのにあせりながら、何とか母親から逃げ、将来の父親と結び付けようと苦労しつつ、学園の悪ガキどもらと闘う姿をコミカルに描く、痛快青春SFファンタジー。乱闘というよりも逃走といったほうがよいかもしれないが、そのクライマックスでの主人公マーティ扮するマイケルJフォックスのエレキギターの演奏シーンも楽しい。
5.トラ・トラ・トラ
太平洋戦争開戦で、日本がアメリカに先制パンチをくらわした真珠湾攻撃を舞台にしたもの。戦闘シーンの迫力は半端ではなく見事である。製作時、まだ戦後25年くらいで、何とか戦争当時の本物の飛行機が飛べる状態で残っており、これをを使って撮影していたとのことで、このシーンは、他の映画でも使い回しされているらしい、映画の中では、日本がアメリカに対して宣戦布告せず、攻撃をしかけた点を問題視し、国際法に抵触する行為であるよう印象付けているが、日本側からすれば、当時経済制裁や、その他無理難題を突きつけられた事情もある。また、真珠湾には、戦艦ばかりで空母がいなかったことから、日本側からすれば、アメリカはこの攻撃を事前に知っていたのではないかという憶測もある。そこは勝てば官軍ということか。とはいえ、嘗ての敵同士が、これを題材として合作映画を撮るということも、おそらく世界で例がないことではないかとも思う。ちなみにタイトルの「トラ・トラ・トラ」は、阪神タイガースでも、動物の虎でもなく、日本軍の暗号で、「吾レ奇襲ニ成功セリ」の意味。(念のため)
6.チキチキバンバン
この映画を観るまで、劇場で観る映画といえば戦争映画がほとんどだった。なぜなら父が戦争映画が好きだったから。それで、この映画も目当ての戦争映画が満席で入れず、空いていたのがこの映画だったので、仕方なく入館したような記憶がある。しかし、はじめて年齢に相応しい映画だったのか、私にとって大変想い出に残るものになった。奥さんを亡くした中年の男には、女の子と男の子の二人の子供がいる。中年の男は発明家で、自分で改造した車チキチキバンバン号に乗って、一家で旅に出る。途中美しい女性との出会いもあり、発明のノウハウを盗もうとする悪者から逃れようとカーチェースもある。圧巻はチキチキバンバン号が空を飛ぶシーンで、観客は拍手喝采を送る。映画の中で流れる主題歌も楽しくて良い。
7.猿の惑星
公開後数十年経ってから、この映画で惑星を支配しているサルは日本人がモデルとの指摘があることを聞き、当時、日本人を「エコノミックアニマル」と揶揄する言葉もよく耳にしたことを思い出した。21世紀に入っても、各個人間同士、国家間同士共に、様々な差別や偏見は一向になくならないし、それが国家間同士であれば、戦争を引き起こすことになる。差別や偏見はなぜなくならないのか。それは他人に対する優越感、支配欲、価値観の押し付け、攻撃性などを、本質的に、人間誰しも持っているものであるからではないだろうか。少々悲観的になってしまったので、本題に戻る。宇宙飛行士チャールトンヘストンは、朽ち果てた自由の女神を発見し、この惑星が地球であり、核戦争で人類が滅亡してしまったことを悟り、愕然とする。全世界で、エゴイズム剥きき出しの争いは絶えず、また核兵器拡散が進む中、このサイエンスフィクションが現実とならないことを祈るしかない。
8.愛と青春の旅立ち
厳しい訓練に耐え、同期の友人の自殺なども乗り越えながら、自らの手で夢を実現するサクセスストーリー。主人公は教官から、空軍パイロットになれるよう鍛えられているというより、むしろパイロットになることをあきらめさせようとしているとしか思えない激しいしごきや人格否定を受ける。苛め抜かれる主人公が、自分の居場所はここしかないんだと涙ながらに教官に訴えるシーンには、胸が詰まる思いがする。邦題の甘い表現とは異なり、映画の内容はことのほか厳しさに溢れているが、ラストシーンの卒業式で、ルイスゴセットジュニア扮する教官の、主人公に対する態度により、彼の心が分かり、後味は悪くない作品である。
9.スタンドバイミー
4人の少年たちが、事故死したという死体を捜しに旅に出る他愛無い話であるが、それぞれの家庭環境や個性がうまく描かれている上に、大人になった主人公がこの小さな冒険を回想するという形式を採用しているため、大人が観ても少年たちに自分自身の思春期を自然に投影でき、一人前の大人への階段を登ろうとする時に生じる苦悩やある種のほろ苦い感情などが共感できてしてしまう。単線の鉄橋を渡る途中で列車が来てしまい、列車と競争するかのように、みんなで逃げるシーンが印象的である。この映画でやんちゃな少年を好演しているリバーフェニックスが、1993年に23才の若さで急逝している。死因は薬物中毒によるものらしい。将来を嘱望されていた俳優だっただけに残念なことである。。ちなみに、題名と同名の、主題歌「スタンドバイミー」は、学生時代にジョンレノンのカバーバージョンの方はよく聴いていたが、この映画には、1961年発売のベンEキングのオリジナル版があう。
10.激突
しがないセールスマンの主人公が前をトロトロ走っている大型トレーラーを何気なく追い抜いたことが事件の発端となる。主演のデニスウィーバーは、国営放送局(NHK)で、コロンボ警部のあとにやっていた警部マクロードの主人公を演じていた俳優。このTVドラマは、田舎もので破天荒な警察官が活躍する痛快活劇。主人公はまさにアメリカ版両津勘吉だが、両津と違うのは、階級が警部であるのと、実際に難事件を解決してしまうところ。吹き替えは宍戸錠が担当しており、随所にコミカルな味をだしていたが、「激突」では吹き替えを穂積隆信がやっており、神経質で陰気な雰囲気を醸しだしていた。ご存知スピルバーグ監督出世作。アメリカではTV用に製作されたらしいが、この後、数々の大ヒットを連発させる同監督の才能を予感させる一作である。
※70~80年代は製作年ではなく、その映画を観た時期を基準としたベストテンです。
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